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2 建物賃貸借契約の終了

(5)正当事由 

(ハ)賃貸人の自己使用
  • 私はアパートを賃貸しているのですが、そのアパートを使う必要が生じたので、次回の賃貸借契約の更新を拒絶したいと考えています。ところで建物の賃貸借において、賃貸借契約の更新を拒絶するためには正当な事由が必要であると聞きました。私のように、自己使用の必要性から、居住用建物の賃貸借契約の更新拒絶をした場合、正当な事由として認められるでしょうか

  • 正当事由の有無の判断
    借地借家法28条は「(更新拒絶の通知または解約の申入れは)建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない」としています。
    自己使用の必要
    正当事由の有無は上記の要素を総合的に考慮して判断されますが、一般に居住目的の賃貸建物の場合、建物を自ら使用する必要性は最も重視される判断要素と考えられており、自己使用の必要性がある場合には正当事由を肯定する方向に大きく傾きます。これに対して正当事由を否定する賃借人側の事情としては賃借人が高齢であるとか病身であるなどです。もちろん、自己使用以外で借地借家法28条(上記1正当事由の有無の判断を参照下さい)に示された要素も具体的事情として考慮されます。そして、貸主側としては立退料の提供(同条の「財産上の給付の申出」)によって、自己の正当事由を補うことができます。
    参考事例
    30年以上賃借人が居住している床面積40㎡の居住用建物賃貸借契約において、賃貸人側は、(1)配偶者の母が膝の痛みから階段の昇降に支障をきたしており、身の回りの世話をするためにも同居を計画していること、(2)賃貸人の子供が難病に罹患しており、そのための介護を必要としていること、(3)賃貸人には他に適切な建物がないこと、などから賃貸建物の自己使用の必要性を訴えました。
    これに対し、賃借人は30年の長期にわたって居住している事実と、転居によって賃借人の妻の心臓病への悪影響があるとして、賃借人側の使用の必要性を反論しました。
    裁判所は双方の事情を詳細に認定したうえで、立退料の支払を条件として賃貸人側の正当事由が具備されると判断しました。この事例では、賃貸人は100万円の立退料を提案していましたが、裁判所は400万円が立退料として適切であると判断しました。
    まとめ
    ご相談のケースでも個別の事情によって結論は一様ではありません。ただ、居住目的の賃貸建物の場合は自己使用の必要性が、正当事由の具備についての極めて重要な判断要素となるということができます。また、立退料についても補完的に考慮されますので、具体的な事情とあわせて専門家に相談することをお勧めします。
    なお、立退きをめぐる紛争が生じた場合、個別の事情が大きく影響しますので、上記参考事例の立退料の額や正当事由の有無の判断は、あくまで一つの参考事例としてご理解ください。