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2 建物賃貸借契約の終了

(5)正当事由 

(ハ)賃貸人の自己使用
  • 私は、平成元年まで東京に住んでいましたが、本社のある大阪に転勤になり、Aさんに自宅マンションを貸しました。当時Aさんとは、大阪に転勤の期間だけの賃貸借契約であり、東京に再度転勤になった場合は立ち退いてもらうという話で契約をしました。そして、昨年、私はようやく東京に転勤になり、今は家族でアパートを借りています。Aさんとは期間3年の契約を何回か更新しており、現在の契約期間の満了の半年前に更新拒絶の申し入れをしました。しかし、Aさんは応じません。私は立退料を支払う必要がありますか

  • 一時使用
    ご相談の賃貸借契約は平成元年に結ばれたものですので、旧借家法が適用されます。旧借家法は、一時使用のための賃貸借であることが明らかである場合には、賃貸人が解約申入れをするにつき正当事由が不要になります(第8条)。そこで、このケースでは、一時使用のための賃貸借といえるかが問題となります。
    たしかに、契約は大阪勤務の期間に限って賃貸し、東京勤務になったときは建物を明渡すことが前提になっていたようですが、契約が何度も更新されている場合は、仮に当初の契約が一時使用のものであっても、20年近く賃借人が居住している以上、現在は一時使用の契約とみることは困難です。
    したがって、一時使用を理由とする立退き請求は困難であり、正当事由がなければ解約申入れをすることができないといえます(第1条の2)。
    正当事由の有無
    正当事由の有無については自己使用の必要性のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、立退料の提供など様々な要素から総合的に判断します。
    このケースでは、賃貸人、賃借人双方の建物使用の必要性を比較すると、特別な事情がなければ、賃貸人の方に建物使用の必要性がより大きいものと考えられます。というのは、賃貸人は東京勤務となっていることや現在アパートを借りていること、やむを得ずAさんに賃貸するに至った経緯などがあり、これに対して、今のところAさんにはこの建物でなければならない特別の事情が明確でないからです。また、東京の住宅事情からすれば、Aさんが代替物件を探すのも比較的容易であるといえます。
    そうすると、一般的には、賃貸人が一定の立退料を支払えば正当事由が認められる可能性が高いと考えられます。
    立退料の額については正当事由の強さや、個々の事情に大きく左右されますが、一般的には賃借人が転居することによって被る財産上の損害を補償するのに相当な額といえますので、不動産業者に支払う礼金や敷金、引越費用などを賄える額が一つの目安になるといえます。