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2 建物賃貸借契約の終了

(5)正当事由 

(ニ)老朽化・建替え
  • 私は、建物を賃貸しており、賃借人はそこで青果店を営んでいます。ところが、その建物の老朽化が著しく倒壊の危険さえある状態です。そこで、取り壊しのために賃貸借契約の解約の申入れをしたいのですが、店舗として利用されている建物の賃貸借契約においてこのような場合に正当事由を満たすためには立退料の提供は必須でしょうか

  • 正当事由とは
    借地借家法28条は「(更新拒絶の通知または解約の申入れは)建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない」としています。
    平成4年以前の契約は旧借家法が適用となりますが、借地借家法28条は旧借家法時代の判例の考え方を明文化したものであり、判断の枠組み自体に大きな変化はありません。
    そして、立退料はあくまで、正当事由を補完するための要素であり、立退料がなくても正当事由を満たす場合はあるのです。
    参考事例(東京地判平成17年7月15日)
    この事例はご相談と類似の事例で、立退料なくして賃貸人の解約申入れに正当事由が認められたものです。事実関係は次のとおりです。
    賃貸の対象となっている建物は木造2階建てで1階部分が30㎡、2階が16㎡で、築100年が経過しているものです(以下「本件建物」といいます)。
    賃貸借契約は昭和20年から続いており、賃料は裁判時に月額2万3000円でした。
    本件建物は梁や桁などの構造を一つとするいわゆる棟割長屋の一部で、賃貸借の対象となっている場所以外は空き家でした。老朽化により建物は南西側で1メートルに9cm、同じく東南側で1メートルに4.5cmの傾斜が認められ、屋根瓦が落下するおそれがありました。専門家によれば、耐震性能評価の値が0.7未満は倒壊または大破壊の危険があるとされるところ、本件建物の値は0.06であり、主要構造部位を補強する工事をするとなると600万円程度の費用がかかると見積もられていました。
    ただ、賃貸人は特にこの建物を自ら使用する必要はなく、逆に賃借人は代々青果店を営んでおり、顧客は近隣に固定していました。
    もっとも、賃借人は64歳で店の売上は1日約2万円であり、今後も厳しい経営が予想されるうえ、現に親類から月額20万円の支援をうけていました。
    このような事情から、裁判所は賃貸人の解約申入れにそれ自体で正当事由があると判断しています。
    まとめ
    このケースは、賃貸人側の自己使用の必要性がなく、賃借人の建物使用の必要性が高いとされたケースであったにもかかわらず、建物の老朽化の程度が著しく建築物としての使用に耐えうる状態でないことや、青果の販売のみで賃借人が生計を維持しているものではないという特殊性から、立退料の提供なくして正当事由がみとめられたものといえます。