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2 建物賃貸借契約の終了

(5)正当事由 

(ホ)土地収用
  • 私は、建物をある会社に賃貸しています。この度、その建物の敷地が道路拡張工事のための買収候補地となりました。一般に、借家人に立ち退いてもらう場合には、正当事由が必要と聞いていますが、このような公益的な理由によって正当事由が認められることがあるのでしょうか

  • 正当事由とは
    旧借家法には、貸主が借家人に契約の更新拒絶あるいは解約申し入れをするには、「自ら使用することを必要とする場合その他正当の事由のある場合」であることが要求されていました。しかし、その他の要素について法律は明記しておらず、個別のケースにおいても正当事由の有無は、貸主・借主双方の一切の利害得失の比較考察のほか、公益上、社会上その他の各種事情も考慮して判断するというのが判例の傾向でした。
    その後、借地借家法(平成4年施行)28条は「(更新拒絶の通知または解約の申入れは)建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない」としています。
    参考事例(東京地判平成9年11月7日)
    京浜急行蒲田駅から徒歩1分に立地する木造2階建ての建物(以下「本件建物」といいます。賃料月額25万円、床面積不詳。)について賃貸人が賃貸借契約の解約の申入れをしました。
    (1) 賃貸人側の事情として、本件建物の敷地は東京都の道路拡張工事のため買収候補地として選定されたこと、本件建物の賃貸借契約には「都市計画などにより賃借物件が収去される場合は本契約は当然に終了する」との条項があり、賃借人も道路拡張工事を予想していたこと、立退料として相当の金額(額は明示せず)を支払う用意があることなどを主張しました。
    (2) 賃借人側は、本件道路拡張工事は、計画のみで今後数十年しても具体化されるものではないこと、本件建物の1階を倉庫兼車庫、2階を事務所兼居宅に使用し賃借人(会社)の営業上重要な建物であること、本件建物に匹敵する好立地の代替物件は容易に見つからないこと、などを主張しました。
    (3) 裁判所は、道路拡張計画が緩やかながら着実に進捗しているとし、また本件建物が道路拡張工事のため買収候補地として選定されたことを重視する一方、賃借人にとって、本件建物が重要であることにも言及しました。結局、賃料の6.8年分に相当する2048万円(=鑑定による借家権価格1662万円と営業補償386万円の合計額)の立退料の支払を条件として、正当事由が認められるとしました。
    まとめ
    参考事例は、旧借家法が適用される契約であり、賃貸人が自ら居住する必要があったわけでもありません。しかし、裁判所は、「賃貸人の事情は自己使用に準じた」ものであるとして、公益的理由をその中に取り込み、立退料による補完によって正当事由を導いたといえます。
    なお、立退きをめぐる紛争が生じた場合、個別の事情が大きく影響しますので、上記参考事例の立退料の額や正当事由の有無の判断は、あくまで一つの参考事例としてご理解ください。